数の禁忌
- 分類
- 禁忌と共同体の制裁
- モチーフ
- 禁忌
定義:伝承において、数が中身に先立って決まっている現象。またその数が実数として固定されるときに生じる矛盾。
もとの意味
正体は揺れるのに、数は動かない。 七人で行動する怨霊、七人ミサキがいる。土佐の伝承では常に七人という数を保つとされ、一人が誰かを取り殺すとその一人が成仏し、殺された者が新たに七人目に加わる。数が決して増えも減りもしない。
ところが、その七人の正体は地域で異なる。土佐では主君に殉じた家臣とされ、別の地では討たれた山伏とも、女遍路とも語られる。正体は揺れるのに、七という数だけは動かない。 数が中身に先立って決まっているかのようである。
なぜ七なのか。仏教が死者を七日ごとに四十九日まで数えることと関わるという見方がある。だが四人ミサキ・九人ミサキと呼ぶ地域もあり、七が唯一の法則だと断じる根拠はない。
数はあとから固定された。 折口信夫は、神に仕える巫女の集団を指す「七処女」「八処女」という古い言葉に注目した。折口によれば、これらの数はもともと実数ではなく「おおよその多さ」を示す不定の数詞だった。それが後に七なら七、八なら八という実数へと固定され、その結果として伝承のなかに数の矛盾が生じるようになった、という。
この見立ては、七人ミサキの謎を解く鍵になる。正体が揺れるのに数が動かないのは、数のほうが先に、しかも「たくさん」という漠然とした意味で存在していたからだと読める。七とは、はじめから「7」ではなく「数えきれないほど」という意味だったのかもしれない。
八も同じである。八百万、八重、八岐大蛇——日本語の「八」は具体的な8ではなく、無限に近い多さを表してきた。
怪談での使われ方
怪談では、数が名になる。コトリバコは封じた子の数で呼び名が変わり、イッポウ・チッポウ・ハッカイと呼び分けられる。折口の言う「不定多数が実数に固定されるときの矛盾」の上に、この命名は立っている。
用例
- コトリバコ — 数えられないはずの命に、数と名が与えられる
類話
出典
折口信夫. 「水の女」. 『古代研究』民俗学篇第一. 大岡山書店, 1929. 青空文庫(底本:『折口信夫全集2』中央公論社, 1995). https://www.aozora.gr.jp/cards/000933/card24437.html, (参照 2026-07-23).
村上健司. 『妖怪事典』. 毎日新聞社, 2000. 「七人ミサキ」の項.
この語を使っている話
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怪談
- コトリバコ コトリバコとは、数えてはならないものに数を与えてしまった箱である。
最終更新:2026-08-21 / 訂正履歴