民俗モチーフ辞典
カイダンペディア
コトリバコの箱には供犠があり、きさらぎ駅の改札には境界がある。
民俗のモチーフが、怪談のなかでどう使われているか。
もとの意味はなにか。どの文献に書かれているか。
ホラーを書く人のための、民俗モチーフの辞典である。
目録
モチーフ 民俗のことばと観念
- 外法箱 器物と呪物 ネット怪談が生んだ架空の呪箱の列に、ただ一つ、本物が混じっていた。外法箱は、信濃の巫女が実際に背負って歩いた祭具である。
- 御霊信仰 死・葬送・穢れ 政治的敗者や非業の死者への怨念は疫病・天変地異を引き起こすが、丁重に祀り上げることで共同体を守護する神へと反転する。
- 茨木童子 鬼と妖怪 捨てられた鬼が、親の病を知って見舞いに戻る。異相の子の悲哀と、帰還の物語。
- 忌 禁忌と共同体の制裁 忌とは、汚いものを遠ざける規則ではなく、触れてよいものから隔てる技術である。
- 犬神 憑依と憑きもの 犬神筋とは、村落内部の経済的軋轢を「血の呪い」として処理するための説明装置である。
- 実況怪談 語りと場 実況怪談とは、百物語以来の「語りの場」が匿名掲示板という器で立ち上がったものである。
- 数の禁忌 禁忌と共同体の制裁 伝承の数は実数ではなく「たくさん」を意味する不定の数詞であり、後から実数へ固定されたときに矛盾が生じる。
- ケガレ 死・葬送・穢れ 最も強い死の穢れを帯びた水死体が、漁村では福の神として祀られる。
- 蠱毒 憑依と憑きもの 蠱毒とは、閉ざされた器で淘汰を行わせ、生き残った一つに呪力を負わせる呪術である。
- 供犠 供犠と代償 供犠とは、価値のないものを捨てる行為ではなく、価値を認められたものを神へ返上する手続きである。
- 境界 境界と越境 境界とは、領域と領域の継ぎ目であり、分類ができないがゆえに魔が宿るとされる場所である。
- リミナルスペース 境界と越境 リミナルスペースとは、逢魔が時への畏れが画像ジャンルの名として再来したものである。
- マレビト 異界と来訪者 稀に訪れるものは、神である。富をもたらし、もてなせば幸を残して去る——ただし、粗末に扱えば災いをなす。
- 連続体の分断 境界と越境 ひとかたまりのものが分割されるとき、そこに秩序が生まれ、秩序は時間を刻み、時間は死を運んでくる。
- 逆さ事 死・葬送・穢れ 逆さにして作られるのは死者の領域だけではない。神の宿も、蘇生の呪術も同じ手つきである。
- 山中他界観 異界と来訪者 山中他界観とは、死者の霊魂が集まる場として山を捉える見方であり、山を日常の外側=異界とする感覚の根にある。
- 縛り 禁忌と共同体の制裁 縛りとは、制約を自らに課すことで効力を高める思想であり、迎えることより返すことが難しいという感覚に根がある。
- 酒呑童子 鬼と妖怪 都を襲う鬼の代名詞。だがその名と髪型は、鬼が身体ではなく身分の呼び名であった可能性を示す。
- 真言立川流 器物と呪物 その姿は、邪教と断じた側の筆によって伝わっている。立川流とは、批判者の記録のなかにだけ詳細を残した流派である。
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── 以下、編纂中。週に一、二話ずつ増える。